転職者の声

文化の違い~「どれが良い」ではなく「色んな考え方がある」~  Kさん(60才)

Kさん 60才 監査役 光通信部品製造ベンチャー

「アメリカ西海岸でPC会社の設立・運営に当たってくれ!」
…50歳少し前の突然の海外転勤辞令であった。

不十分な英語力、会社設立や運営知識不足等 
不安は多かったが
「シリコンバレーでの事業展開」と言うロマンに魅せられ、
旅立ったのは10数年前のことであった。

会社の設立登記、社屋の賃貸借契約、キーマネージャーのリクルート、
生産設備の準備、設立総会の開催等ビジネス開始の準備作業と共に、
私生活面では、アパートの契約・レンタル家具の手配・ビザ申請・預金口座開設・
自動車免許取得・車購入等の準備も着実に実行していった。

下手な英語で苦労したが、「自分は何をしたいのか?」の単語を並べると
意外と通じるものであった。

アメリカでの生活は、出張の場合と異なり、赴任となると毎日の
生活は驚きの連続であった。
何故、そこまで日本と異なるのか? 
文化の違いを考えさせられた例をいくつか紹介したい。

1.自己主張について

特に仕事の上でローカルスタッフと接する機会が多かったが、
彼らの自己主張の強さには驚かされた。

リクルートの面接では「自分の立派な経歴、高い能力、
採用側のメリット」をとうとうとまくし立てる。
採用が決定した後接したら、基礎的なことを
理解していないことが多々あり苦笑させられた。

業務の上では「自分の成果」を強調する。
営業は個別の注文が取れたことを誇らしげに報告するが、
合計で目標が未達成のことは説明しない。

仕事で「Good job!」と誉めようものなら大変である。
翌日には早速「給料を上げてくれ」とか「ポジションを
上げてくれ」とストレートな要求が出てくる。

「おいおい…もっと、奥ゆかしく!…努力すれば黙っていても報われる!」
と言う日本の文化は通じないのである。

現地の経営幹部はLTIP(Long Term Incentive Plan)で高い報酬を要求し、
目標が未達成であってもそれは「他人の所為(日本側の製品の所為)であり、
自分は目標以上の成果を挙げた」と説明する論理は日本人には理解しがたいものがあった。

2.製品やサービスの品質について

アメリカ社会は「人間はミスを犯すもの」と言う前提で構成されていると思う。
人が作る製品に不良はつきもので、不良がでたら取り替える。
或いは、高速道路で目的のインターチェンジで下り損なったら、
すぐ次のインターチェンジで下りて引き返せばよい仕組みとなっている。

ちなみに日本から赴任した管理者3人の車はアメリカ製にしたが、
すべて初期不良(エンジン制御のプログラムが不良で火災発生の可能性あり)が発生し、
リコールが来た。ローカルスタッフに聞いたら「リコールは日常茶飯事、
車は1年位乗ると不良が全てたたき出され、品質が最高になる」という。
「初期不良が嫌だったら、高い日本車に乗りなさい」とも言われた。

3.合理性について

会社で発行された小切手にサインを行っていたら、請求書より3¢高いものがあり、
スタッフに指摘し返却した。然しながら、そのスタッフはチェックを修正しようとしない。
「3¢の相違は認める。しかし、チェック再発行のコストはもっと高いから実施しない」と言う
そのスタッフの主張を理解するのに相当の時間が掛かった。

交差点では安全を確認すれば赤信号でも右折(日本の場合の左折)できる(原則)。
また、交差点の非優先側の大半の道路にはセンサーが埋め込まれていて、
車が来ない限り「非優先側の道路の信号が青になる」ことはない。
深夜で車が出てこない交差点のメインストリート側の信号が赤となり、
それを律儀に守っているどこかの国との相違を感じさせられた。

4.選択(チョイス)好き

ローカルスタッフは概ね3年ごとに会社を変えていた。
3年間その会社の当該のポジションで努力し・成果を上げると、
次はより高いポジション・報酬に挑戦している。

あるローカルスタッフに「仕事の選択基準」について質問したら、
「その会社のビジョンと自分の将来に対する有効性」だと明確に説明してくれた。
仕事は自己実現のための一つの選択のようである。
昼食のサンドイッチを注文すると、パンは何にする? 挟むものは? 辛子は? 
等々選択を迫られる。
また、アメリカ人が回転すしを好むのも「選択に満足」しているからのようである。

同じ事象でも、その人の育った環境(地域、習慣、文化、教育等)により
受け取り方や対応の仕方が異なる。

私は「どれが良い」ではなく「色んな考え方がある」と理解するようにしている。
そして、必要な時だけ「どれが一番良いか議論しよう」と持ちかけ、
相手にも色んな考え方があることを理解して頂くようにしている。
色んな選択肢があることを理解した上で、選択した方法が
最善の方法となるケースが大半である。

今回、60歳の定年を機に従来の職場を離れ、
オフ・ビートさんのお世話により「新世界」を紹介していただいた。
新しい職場は「若い会社」であるが、やはり、そこには固有の歴史があり、
異なった文化がある。

新しい文化に接することは一つの楽しみでもありそうだ。

コンサルタントのコメント

Kさんは、海外での勤務経験、独立経験、なども含めて
自分の考えと違うたくさんの人達とお仕事をされて来た大先輩です。
一言一言に重みがあります。

「『どれが良い』ではなく、『いろんな考え方がある』」ということを
理解することが、転職をうまく行かせる一つのキーワードかもしれませんね。
(北田)

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